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公共事業における良好な景観形成に向けて~土木景観の理解と見方

プログラム

ID : 20150819-325325-02

目次

公共事業における良好な景観形成に向けて~土木景観の理解と見方

講師:(独)土木研究所寒地土木研究所 地域景観ユニット 総括主任研究員 松田 泰明

以下の資料は、受講者の技術研鑽に役立つことを願い、講師のご厚意により提供いただいたものです。

公開


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みなさん、こんにちは。寒地土木研究所 松田泰明です。


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我々地域景観ユニットがどのような研究をしているかというと 良好な景観形成による社会資本の質の向上や利用価値を高めて、ユーザー満足度や地域を支援する研究を行っております。社会資本のユーザーや地域の視点で研究を進めています。 大きく分けて二つの研究を進めています。
 土木景観に関する研究  社会資本の観光活用に関する研究 後者の研究のなかでメインでやっているのが道の駅の設計・改修技術や魅力の向上手法等をこちらの分野で行ってます。その関係で安平町さんがこられてますが、昨年9月に安平町のほうでも研究所に寄っていただきまして、道の駅をつくりたいと申してました。また、厚真町に関しては3年前に地元に道の駅をつくろうかどうしようかということで相談されにきたことがあります。  今日こういう話をするんですが、その前にですね私のことをお話しすると景観に関しては今開発局と繋がりがあるものですから開発局のほうは景観施策アドバイザーや土木学会景観デザイン研究会委員会をやってまして、都市計画学会 北海道支部もやっております。道の駅アドバイザーもしております。


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 みなさんのお手元に資料を配ったのですが、景観と一口に言っても非常に範囲が広く今日は時間が3時間ほどしかなく景観の話をとても全部することはできないですがどちらかというと道路の景観とか何かの景観ではなくてもう少し広く公共事業あるいは土木景観ということで公共空間を中心とした景観の教養編として進めさせていただきます。


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P7 この赤い部分なんですが、これは専門の技術者だけではなく市民講座なんかでも少し簡単にしてやったりしているので、今日は土木の方が多いと思いますが土木以外の方もいらしてるので技術職に特化した話ではないんですが、後半のほうは折角技術者のかたがたくさん来られてるので、ちょっとコスト縮減の話をさせていただきます。  今日お話しさせていただくのは、この赤の部分、景観の見方・理解の仕方 まず、現状と課題。なぜこのような現状になっているのか?日本って景観に問題がいろいろあるよねって話をよくするんですが、実は、景観を特別悪くしたりしたわけではなく、いろいろな要因があるわけですが、特に日本の場合は高度成長期に大量のインフラを極めて短期間に作らねばならず、学校を出たばかりの若い技術者が設計できるように標準設計というようにいわゆる規格をもうけなければ間に合わなっかった。こういうことがいまだに影響を及ぼしている。土木公共事業というのは基本的に一品生産です。すべてオーダーメイドでつくらなければならないのですが、先ほど述べたとおり規格とおりになってしまった。戦前の日本ではこういうことにはなっていなかった。


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戦後の高度成長期からこういうふうになってしまった。 景観の勉強や手ほどきを受けた方いますかと聞いたら、まずほとんどいないです。 学生時代土木の授業があったかと聞くとたぶんなかったと思います。今はかなり景観に関する授業をするところが増えておりまして、北海道でいうと北海道大学と北海学園大学と北海道科学大学等で数年前からそういった授業を行っております。 そのようなことから自分は景観の勉強をしていなくても、新しく入った技術者や若い技術者は勉強しているかもしれません。そういう人たちは理解力が全然違います。


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もうひとつは、職場に入ってからなかなか景観デザインに関して勉強する機会がないとか 誤解が生じている景観はセンスで理解するものではないということ結局わかっていないことでこういった誤解が生じている。 社会的な環境を整えるためには2つあります。 1つは、なぜ景観が大切なのかという本質的なこと。もう一つはそれを理解したくてもそれを実現するための技、いわゆる技術がない。今日は上の話と下の話の入口くらいまで話したいと思います。


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P6 景観というものが誤解されているのではないかという話ですがここに、書いてある7項目の半分以上については大半の人はそうのとおりと思っています。決してそうではない、景観と機能とは関係なくはない、例えば飛行機のデザインを見ても機能性からあのようなデザインになってます。土木も工学ですから当然それを使うわけです。ですから景観と機能と密接に関係しています。


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P7 本題にはいりますが、最初に、良好な景観形成の意義~なぜ景観を良くするのか~ いろいろ景観がありますが国交省ではすべての公共事業において景観形成に配慮すると決めたので、やらなきゃいけない。


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P8 そういうこともあるが、根本的になぜ景観なのかというと、もともと人間は誰しも美しさへの欲求を持っているということ、人は美しいものを見たり、触れたり所有することにより喜びを感じ、人生の豊かさを享受できる。ゆえに人は美に集まる。それをマズローの五段階欲求説にあてはめるとこのようになる(P8の図) 特に現代では上から1~2段目が重要視されている。


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P9 美しいという文字は、羊が大きいと書きます。人間にとって痩せ細った病気の羊よりは、健康でまるまると太った羊の方が非常に人間にとって有用で好ましいこと、ですから美しいというのは単に見てくれがいいとかではなくて、本質的には人間にとって有用なこと、好ましいこと。ですから美しいという字を使って美味しいと書いたりします。


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p10 この道路の景観があまり好ましくないと思うとは思わないですよね。どちらかというときれいで、走りやすいですね。つまり、人間にとって好ましく、走りやすい道路。たとえばこの写真の区画線を消してみたり、消えかかった写真を見せると、いきなり景観が悪く見えますし、運転しづらいですよね?ですから単に見てくれがどうということではなくて、美しいということは人間にとって好ましい環境だということを言いたい。


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P11 あと河川です。どうでしょうか?この河川いいな~と思いませんか?普段見てる川よりも心地よいと感じませんか?ですよね。景観を考慮して整備している河川です。要するに川の様子がわかりやすい、利用しやすい、川に近づきやすいが人間にとって好ましい。 氾濫したらすぐわかる。 p12 これどうですか?寒地開発研究所の裏の川なんですがどうでしょう?この河川の景観を見て、よく河畔林を切ると環境が悪くなると言われますが、景観としてはあまりよくない、わかりにくい、利用しにくい、洪水が起きても川の様子がわからないですよね、管理がしにくい。というように木のある景観というのは人間と非常に近い密接に関係しています。 (2枚の写真を比べて) どうでしょう?上の写真と比べて下の写真の方がよくはないがまだましでしょう。川面が見えるので、たぶん安心しますよね。 P13 次に農業の景観です。 非常に豊かさを感じますよね?ここでは安全で美味しいものがたくさん取れるのかな?今年も豊作かなと思ったら、非常にいい景観だと思います。


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Do 実施内容です。 この写真は、私が 自転車に現場に向かっている写真です。
・・・・・鉄板上での自転車走行

リアルな写真を載せてみました。


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P14  話が変わりまして道の駅になります。どうですかこの2つの道の駅を比べて 左のコンクリートで固めた道の駅でゆっくりと休みたいと思いますか?あまり思わないですよね。  右の方の道の駅はどうでしょう?こちらの方が休みたいなと思いますよね。これは先ほどの道の駅に比べるとおもてなし感が空間に表れてます。どうぞ休んで行ってください。椅子やテーブルがあって、子供用のいすもあってどうぞゆっくりしていってくださいって感じがします。 先の道の駅はどうでしょうか。休むなら勝手に休んでいってくださいみたいに受け止められます。訪れる人が大切にされていない。こういうことは人間が全くの無意識のうちに感じる。ですから景観的にも左の景観よりも右の景観のほうが良く感じるわけです。23:40 人間にとって自分が大切にされている空間の方がよく感じるのです。


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P15 次にどうでしょう?どちらがいい景観でしょう?右の写真の方が電線や電柱がたくさんあり、良くない看板もたくさんありますが商店街としては健全です。いうなれば健康です。 人間も病気だったり、メタボだったり怪我してる時の悪い時よりも元気でいきいきとしている健康な時の方が良く見えますよね。それで町も健康な方がいいですよね。 景観が良くないとか景観は関係ないとかではなくて景観が悪いからどうでもいいんじゃなくて景観が良ければ何でもいいかということではなく、少なくても景観が良くないということはどこかに問題がある。ただ、景観が悪いから景観は別にいいやではなく、そこから見えるものとしていろんなものがそこに表れてますよ。その時に人間というのは、自分にとって好ましいあるいは健全である。安全である。使いやすいってことが良好な景観形成につながる。


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P16  景観の意義について、どのように考えていけばよいかというと景観のとらえ方として4つあります。
 1 人間の生存本能から見た景観   生存に適した環境を評価する。例えば、自分は周りからじろじろ見られていないが自分は周りを見渡せる。例えば展望台に登ってまわりを見たり、サバンナの端っこの小高い丘や崖があってその上から広い草原を見渡している。すごく気持ちがいい。それは敵がやってきたり獲物が来たらすぐわかるし、自分は襲われない環境にある。ですから自分にとって適した環境である。このようなことは人間のDNAのなかに組み込まれている。例えばレストランへ行っても窓際壁際の席に座ると安心する。
 2 行動科学からみた景観 展望台に登ってみたりとか、よくみなさん、知らない町へ行くと展望台へ登ったりします。自分の住んでる町と同じとか思う。それはなぜかというと、自分の環境がどういう所なのか町がどういう構造になっているのか知りたいんです。それが行動科学からみた景観です。 普段見慣れた風景が高層マンション等が新築され見慣れた風景が見えなくなると不安感を覚えてしまいます。  3 人間の視知覚特性と景観の関係 人間の視野角は何度とか、黄金比、名刺のサイズがなぜこのサイズなのかとか、人間の視知覚特性として景観がどういう風にとらえられているのか。 このように1~3までは人はほぼ同じように感じます。よく景観はひとによって違いますというのは次のようなことが要因です。
 4 社会/文化に根ざす美意識と景観 歴史や文化による様式の違いあるいはひとが育った環境の違い。要するに景観というのは目から入ってきた情報だけではなく心で理解しているもの。それによって様々な理解の仕方がある。例えば、同じ美しいものでも、様式というのは、誰にでも理解される心地よいデザインが究極の様式、歴史や文化で変わり、全然場所が変わってもそれは変わらない。    したがって、景観というのは社会資本の基本条件の一つで、用(機能性)、強(安全性)と共に社会資本整備に不可欠な要素である。ギリシャやローマの建造物の中でもローマ道なんか美しくなければローマ道ではないと言われたほどで、景観は決して最近の話ではない。


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P18 景観法ができて10年がたち、高度成長期に画一的になった面も今でも影響していますが、大正時代に作られた旭橋ですが戦前にはこういった素晴らしい橋も作られていた。 機能を重点的に設計したのでこのようなデザインになった。 P20 このほかこういった構造物があるのですが、笹流ダムですがコンクリートの量を極限まで減らすようにしたため、このようなデザイン・設計になった。ですから必ずしも景観をよくすればコストが高くなるわけではないし、こういう形にしたかったからといってしたわけでもない。 P21 このなかで特筆すべきものとして、北防波堤ドームですが、高度経済成長期にこのような素晴らしいデザインをつくった このように景観とかデザインというのは、それそのものが目的というよりは結果として経済性や性能のいいものをつくると形が表れてくるが、この時まったく別の視点から景観の重要性を説明させていただきたい。


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p22 外界認知は五感によって行われている。情報の80%は目から(外界認知はまず視覚から)  我々は、その街が良いかどうかは、目からの情報で判断している。景観に配慮しそれを整えることは、地域にとってきわめて重要な仕事である。 社会資本は公共空間のなかで、不特定多数の人に非常に長い時間見られる対象である。したがって「景観検討は不可欠」ということになります。 例えば携帯電話や自動車のデザイン、非常に重要であります。それによって売れ行きが左右されます。それによってどれだけ愛着をもって使われるか。非常に重要でありますが、携帯電話であれば3年程度、自動車であれば5~10年使われますが そういうもの以上に、インフラというのは不特定多数の人に、50年、100年もしくはそれ以上の長い時間見られるので、景観検討は不可欠であるということになります。


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P22~26 景観の意義とは、北海道へドライブ観光をするためにたくさんの人が来て、沿道からの景観は旅行の目的の大きな要素である。ドライブ観光の旅行満足度についてアンケートを行った結果、道外観光客の回答は道路からの景観、外国人観光客からは道路沿線の景観にとても満足が最も多い回答でした。 景観は道路だけではなく、自然景観、農業景観といろいろ含めて北海道観光の満足度を高めていくようにしようとしています。


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P27・28 景観の価値や効果 景観が良くなるとどんな良いことがあるのか?また逆もあるのですが、景観にはどんな価値があるのか。利用価値、非利用価値の2つに分けられる。さらに利用価値は直接的・間接的・オプション。非利用価値については、存在価値・遺贈価値に分けられる。 P29・30 景観に配慮した事業とそうではない事業ではどんな違いがあるか、また良い景観はどういう効果をもたらすか?たとえば、わかりやすい例として、小樽運河の臨港線の事例をあげると、小樽運河が整備されると、そういった効果というのはどういう効果が出てくるかというと時間と共にどういう順番で現れてくるかということがある程度わかってきまして 国交省・景観の事後評価の手引きより 整備された空間を認知・印象効果 人の意識に与える効果 人の意識が変わってくる、愛着がわく ランドマークに変化する そこに住む住民の実際の活動が変わってくる。利用者が増える、いろんなイベントがあり、地域の活動が増えたりそれらが地域全体に影響し、雰囲気が変わりお店が増えたり、整備する地域をもっと広げるか、景観整備条例を作るか等、それが地域の良い様々な効果。それによってマスコミに取り上げられ、また人がどんどんやってくるという効果です。逆のパターンは非常に悲惨な状態となります。


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P31・32  次にニセコの綺羅街道の検討事例ですが、景観整備後のアンケートでは、景観整備にお金をかける価値という問いにはほとんどの方が価値があるという風に答えていますし、景観形成が行われて良かったと感じているかという問いでは、他の地域に自慢できる道路になったとか、イメージが良くなったという回答をいただいてます。


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P33・34  先ほどの小樽運河でも、観光入込数は整備前と比べると271%増加したことになります。
 次に、函館西部地区については、整備前は観光客の5割程度しか訪れなかったのですが、整備後は8割以上の観光客が訪れるようになった。また、古い建物を飲食店等として活用したいという需要が増えてきてます。


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P37  景観整備による社会的効果とは、出来上がったものによる効果と、事業のプロセスによる効果。例えば、整備前の小樽運河の保存運動等 プロセスの効果により大切にされる。 一番わかりやすいのは、市民植樹です。行政機関のほうで道路を整備し、街路樹を植えていきます。というよりも市民が参加したり、植える木の種類をみんなで話し合ったりすると、愛着を持たれるし、勝手に切られたりすることもないでしょう。みんなの認知度も違うし、大切にされると思います。このプロセスが非常に大切だと思います。


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P38 こちらの小樽運河栄町通りですが、行政主体となって整備を行ったのですが、非常に景観が悪くなり、小樽の景観を愛する人たちのなかには栄町通りは小樽の恥だという人もいます。プロセスが十分ではないと整備してもとても残念な結果となります。


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P39~41  次に、技術的な話になります。景観の見方。どういう景観がいい景観かということ。 先程、景観はセンスで理解するものか?とでましたが、景観は技術です。 景観とは群の全体的な眺め、それによって形成される人間の心理的・生理的な現象。知識や経験、価値観、文化や歴史で評価が変わる。ですから、景観は見る人によって印象が変わる。よって、景観は主観的と思われる。しかし、共通の経験や文化を持つ人には、景観の印象に共通性がある。客観性や必然性、社会性、さらに、経験などに関係なく人間の本能的な共通の内面的システムとも思われます。


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P42  景観とは、ある「対象」を、人間が「見る」ことによって成立する。見ることができなければ景観ではない。その景観というのは、町並みや山、川、田園、樹林、地形などで、人間等すべてが含まれる。ただし、一輪の花を見る場合にはそれを景観とは言わない。 物ひとつではなく、それぞれの関係性です。「景観とは人間をとりまく環境の眺めにほかならない」ということです。 P43  次に、視点と視対象ですが、見る対象を「視対象」、見る位置を「視点」、視点のある場所を「視点場」と言います。 P44  次に、景観はセンスという誤解 上手に絵が描けなくても、きれいな写真が撮れなくても、基礎知識があれば絵や写真はどういう価値があるのか理解することができます。景観も同じです。なぜ、この景観はいい景観かなどは景観の勉強をすると理解することができます。 P45 次に良い景観、悪い景観ですが、人は見たいものを見る。等しくものを見ていない。網膜には等しく映っているが、等しくは見ていない。人は見やすいものを見る。見たくないものも程よい大きさで目に飛び込んでくる。どうしても見てしまう。 P46 山が目に飛び込んできます。 P47 ここがどこなのか、地域がどこなのか理解しようとします。先ほど述べたように、それが人間の本能です。そこがどこなのか無意識のうちに判断します。この写真を見たときに恐らくみなさんここってどこなんだろうと思いませんでしたか?そう思った時に、車やガードケーブル、法面を見たってここがどこなのか理解できませんよね。空見ても理解できない。手がかりは(山を指して)ここなんです。ここを見たら理解できるんです。それと程よい大きさで目に飛び込んでくるという両方がかさなっているので100%目が行くと思います。これはセンスではなく知識です。 P47  次にこれです。ほとんどの方が水面(○で囲まれた部分)を見ます。やはり、あぶないなーとか思ったり、その場所はどうなっているの理解しようとするように、手がかりを与えてくれるところを探します。 P48 (○で囲まれた部分を指し)ほとんどの方がカーネルサンダースを見ます。だいたい健康的な普通の人でしたら、そこを見ます。特に日本人はこういう所に目が行きます。なぜかというと、人と違っていたり住んでる所と環境が違う所に目が行きます。日本だとこのような橋脚のところに広告を付けたりしません。仮に日本でもこのように橋脚に広告がたくさん付いてたらそんなに見ないと思います。たぶん違う所を見てると思います。あるいは程よい大きさのものを見てます。 P49 いろいろなところが目に入ってきますよね。これはそこがどこなのか理解する手掛かりを与えてくれるものを探す。もう一つは見たいもの。これらが重なると50:45 実はこの写真のなかには見たいものやそこの地域を理解する手掛かりが写ってます。 こういう風に、人は見たいもの、その見たいものというのは、本能的に見たりとか、程よい大きさのものだったりする。 P50 遠景・中景・近景とありますが、こういうのが絵画や写真でもいい作品と言われる。地域を理解するためのものが奥にも中にも手前にも映ってます。これらのことを理解すると人間が心地よく感じる景観というのは共通性があると言えます。 P51  総じて良い景観とは、見たいものが見やすいこと。逆に言うと悪い景観とは見たくないものがなるべく見えないこと。これは一例です。景観整備のときは見たいものが見やすくて、見せたくないものはなるべく見せない目立たせない。これがプラスの最大化とマイナスの最小化ですが、プラスの最大化は大変です。山の形は変えられないし、照明灯のデザインも良くしなければならず、お金もかかるし手間もかかる。ところが、マイナスの最小化はかなり効果も確実ですし、お金もかからない。例えば電線電柱の地中化等です P52・53 見たいものが邪魔されず見えるようにすることが大切。視点と視対象の間いわゆる視線軸を邪魔しないようにする。道路というのは視点になったり視点場に良くなります。 P54 前方の山並みいわゆる視対象を屋外広告や案内標識、電線電柱が視線軸を阻害しています。しかし、ドライブでやってきた観光客が車の燃料を入れたい人でしたらこのガソリンスタンドの看板を見て景観が悪いと思いますか?トイレに行きたい人や喉が渇いた人がコンビニに行きたいって人がコンビニの看板を見て景観が悪いと思いますか?たぶん思わないです。それはその人にとってこれが徳だからです。その人にとってそれが今必要だからです。ですから人間にとってその時の立場によって違ったりします。 P55・56 復習すると、景観を良くするには、見せたいものすっきり見やすく、見せたくないものをできるだけ目立たせない、プラスの最大化、マイナスの最小化、それらだけではなくさらに見たいものをより印象的に見せるような演出をするとさらによくなると思います。 それには適度な引きや視点場作りが必要です。 P57 みなさん、ここで写真とりますか?もうちょっと引いて撮ります?城を見たかったら一度この辺でとまってみますね。ここで記念写真撮りますよね。これが適度な引き。見たいものがすっきりみえますよね。順光で光が当たってます。だけどこういう大きさで見えるには適度な引きが大事。 P58 ここで実験をしたいのですが、海別岳見込み角3°ちょっと遠い感じがします、羊蹄山のビューポイントパーク見込み角13°ちょうどいい具合、札幌テレビ塔見込み角41°近づきすぎて仰ぎ見る感じです。だいたい人間は手を伸ばし拳がグーの形からパーの間くらい10~20°の間が一番見やすいと言われてます。私は個人的にはグーの形に近い方が見やすいです。このスクリーンの明かりの当っている部分、皆さんグーとパーの形で当ててみて下さい。恐らくこちらの正面の方はグーより大きいと思います。パーより小さいと思います。そうするとこのスクリーンを見ててそんなに違和感ないですよね。(会場の真ん中を指して)恐らくここらへんからだと違和感を感じると思います。ですから映画館の座席もそういう所から埋まっていきます。アクション映画だと動きが激しいのでちょっと引いて見た方がいいし、静的なものだと前のほうで見た場合がいいかもしれません。 P59  これは羊蹄山のビューポイントパークから撮ったものですが、視点場の位置は非常に重要です。できれば光が順光に近い形で当たったほうがいい。ですから北側に戻ったり、 家でも北側の窓は以外と眺めが良いわけです。したがって、ビューポイントの駐車場をどこに作ろうかと考えたときにセンスで作るのではなく知識として考えたときはグーからパーの間で、光ができれば順光に近い形で当る場所がいい、あるいは観光のことも考えてどこかに止まってお昼ぐらいに見れたら食事もするからちょうどいいよね、ということ からビューポイントの位置を決めた。それで見たいものを見せる。すっきりと見せる。 というようにセンスではなくて知識でそのように計画した。景観の勉強をしていれば少なくとも失敗は少なくなる。 P60 函館山の夜景はなぜ素晴らしいのか。 いろいろあるのですが、周りが海の為真っ暗、コントラスト明暗の比です。同じ光の明るさでも暗いところのそばでは際立つ。道路が視点に向かっているので車のヘッドライトや街路灯の光が流れて見える。残念ながら札幌の藻岩山からの夜景は網の目になっていて意外と街に光があってもきれいには見えない。一番大きな理由は俯角が10°ということ。俯角というのは、視点が高いところにあり、対象を俯瞰する角度です。10°が一番見やすい 10~30°が見やすいと言われてます。歩いてるときにはつまずく可能性があるので人間の本能として下を向きます。30°位になります。10°くらいのところが一番明るい1枚ガラスになっています。例えばこれをパソコン画面とか自宅でテレビを見るときみなさんどうしてます?目線と同じ高さにしますか。それより必ず低くしますよね、ですからこの講義も結構疲れるのです。みなさんの目線が高い、だから今みなさんがこういうものにだまされないで前の人とかぶらないでぎりぎりのところで止めている。だから展望台を作った時にマイナス10°に何が見えるのか、せいぜいマイナス30°。スーパーでも売りたいものというのは低い位置のワゴンセール、本屋さんで平積みとしたりしてる。とこういうことは基本的な知識のうちです。 P62~63  視線入射角。視点と視対象の話です。  見る角度によって当然見方が変わる。41°、16°、9°どれがいいですか。 9°が黄金角度。入射角で一番美しく見える。橋を見る展望台を作るとしたらこの角度から見る場所に作った方がいいですね。背景や景色の影響があるのでこの角度が絶対かというとそうではないが一般論としてこの角度です。  十勝川温泉、15°。さっき言った最後から2番目です。印象的ではあります。次9°よりもう少し入ってます。6°位です。行きすぎです。低い位置なので比べようがないですが、こういう風に入射角によって見え方が違うということです。人間の反応としてみんな同じように印象的に見えるということ。これは最初にいった4段階のうちの3段階目人間の視知覚反応として、こういうふうにものが見えますよということです。 P65~66 視距離と認識  これは距離が変わったらどのように見え方が変わるかということ、距離を考えて表現できるテクスチェアで、構造物の表面仕上げをどうするとかどこから見られるか距離が発生するという話です。一番わかりやすいのは近くにいたらどういう花かわかりやすいがちょっと離れるとそこまではわからないがどんな花なのかそれより離れると花はわからないが何か生えてるというのがわかる程度。 P67 これを土木に置き換えるとコンクリートの表面処理にお金をかけても一番近い視点場から見ても距離があってそれが何なのかわからない。 そういうことにお金をかけても無駄です。もっと大きな模様とかを入れないとだめです。 景観に配慮しましたと言っても意味が解らないです。 それは景観配慮が無駄ではなくて技法が無駄ということです。 P68~69  囲まれ感、囲繞感 距離と高さの関係にて囲まれ感が生まれる。およそ14°だと囲まれ感が無くなる。45°となると完璧な囲まれ感や囲繞感が生まれます。これが例えば街路の設計で、街路幅員と沿道の高さの比をD/Hといい、パリのシャンゼリーゼだと D/Hが2.5~3くらい札幌の大通り公園では3~4、旭川の買物公園でDH1.3くらい解放感はないけれど冬なんかは暖かみがある。 P70  視対象の統合性 (写真をみて)庁舎が程よい大きさで見えるが、後ろの建物も一緒に目に入るので残念な景観となっている。見たいものは見ると最初からいってますが、見たくないものをすべて排除することはできないのです。 P71 視点場づくり 今までは視点と視対象の関係性を説明してきましたが、視点場というのは視点となる環境のこと。 P72 (左の写真をみて)どうですか?これはあまりいい景観ではないですか?結構いい景観だと思う方?そうですね。これはいい景観ですよね。見たいものが全部揃ってます。ところがこれを見る場所が問題です。(右の写真)この駐車場の柵から身を乗り出さないとこの景観は見れない。この景色は素晴らしいですけども、この景色を見る場所は非常に残念。この事例は景観整備としては非常に残念で、いかに視点場というのは大事ということです。 P73 (左写真をみて)景観整備された横浜のみなとみらい地区、視線がつま先さがり、もしかしたら先ほどの景観もひとによっては非常に魅力的かもしれません。しかし、そこの駐車場で弁当を広げて30分くらい休みたいなと思いますか。みなとみらい地区ではどうですか?実際写真に写ってる人はお弁当を広げて休んでいます。ちょっと長くいたいと思います。つま先さがり、俯角が10°くらいでちょうど良い視点場の整備をするならこのように長くとどまっていてもらえるようにする。良くある昭和の時代やバブル期までに作られた展望台もそうですが、(P75写真)美瑛にいって右下のような展望台あっても2回目行きますか、札幌テレビ塔上りました。2回目行きますか?いかないですよね。ずっと長くとどまっていたい感じがしないから。皆さんひいきせず見て戴きたいのですが、よくいろんな自治体で展望台ありますよね、全然人がいないです。地元の人が犬の散歩に来てるくらいです。ほとんど人がいない(みなとみらい指して)こういう所だったら何度でも人が来てくれる。同じ人が来ても滞在時間がながいので、結局人がいる状態。展望台とか眺望施設を計画整備する場合、こういうことを考えて計画整備しなければならない。 P74 上富良野のシーニックデッキみて下さい。ちょっと小さ目ですがいろんな自治体にある展望台と比べてどうでしょう、どっちかというと何回来てもいいかなと思うでしょう。 テレビの特集番組で倉本聡さんの対談番組を撮影した場所です。噂が噂を呼んでツアーのバスが来るようになって終いには外国のツアーバスが来て大渋滞となり警察の方からダメだしをくらい撤去してしまったのです。ですから自治体で環境整備するときに数千万円かけて展望施設をつくるよりお金がかからないこういった施設の方が地元住民も使えるし、渋滞なんかも起こらないような場所に作ればいいんではないか。 P76 図と地の関係、ゲシュタルト心理学 図というのは形として浮かび上がる領域。地というのは図の背景として知覚される領域。 この有名なルビンの壺ですが、ここで簡単な実験をします。黒い部分が前にあって、白い部分が奥にある場合は何に見えますか?顔ですね。逆に黒い部分が奥にあって白い部分が前にある場合は白い部分は何に見えるか?壺というか、花瓶のように見えます。後者の場合、黒が地になって白が図となります。前者の方は白が地となり黒が図となります。これをどう意識するかによって変わってきます。最初に述べたように、網膜には同じものが写ってます。脳を通じて2回見ると違う風に見えてる。それが今の現象です。それが健全です。人間はそのように見えてきます。例えば木がたくさん有るところにライオンが出てきたとすると、木や葉っぱを地としてみるか、トラを図としてみると、森の中に動物がいるのなんか全然わからないのに、そのようにみると急にトラが見えだしてくる。人間の生存本能というか種の保存から来てるのでしょうか。それを土木の構造物に置き換えると P77 右と左の写真どちらの景観がいいですか?左のほうがいいと答える人が3/4くらいの人がいいと答えます。それを今の図と地の関係で話します。さらに言うと人間の育った環境だとかその人の経験等で違います。(ひだりの写真を指して)これの地はどれですか?空ですね。図はどれですか?橋ですね。解説すると図と地の関係がはっきりしていて、先ほど言っている見たいもの図となるものが騙されずはっきりしている。しかも大きさも程よい、 角度も先ほど述べた10°程度、橋の構造が解りやすい。非常に良い景観です。構造力学に詳しい方なんかだと余計にきれいにみえるのではないかと思います。右の写真どうでしょう。左の写真よりちょうどいい角度、視対象がすっきり見えます。光も順光で当ってます。中景・遠景揃ってます。だけれどもどれが図でどれが地ですか?名峰岩木山が写ってます。 地域が大切にしているもの。地域を表すもの。地域を理解するもの。そしたらどちらが良いですか。今の話からやはり左の写真の景観のほうがいいでしょう。ですから目には同じものが移っていても、図と地の関係をいろいろな地域の関係あるいはいままでの話を理解すると左の写真の景観のほうが良くなる。 P78 輪郭線 なぜ左の写真のほうが良くないかというと図と地を分ける領域、よくスカイラインというのですが、そこの領域があやふやになっている。そこが乱されていらいらする。 自治体の方が景観計画を立てるときに主な視点場からうちの山を見せたいという時に、高さ制限をスカイラインよりしたにすると良い。それを景観の知識があればいうことができる。これがゲシュタルト心理学の輪郭線です。 P79 群化 図となる対象が複数あるとき、対象相互が影響を及ぼし合い一つのまとまった群れとして知覚される。ひとつひとつ見るといろや形が違い、まとまりにくい。この時人間は相互にまとまってものを群として見ようとしてます。それをスイスのエレマンスや白川郷に当てはめると、エレマンスでは建築様式は同じですが、一つ一つ見ると違います。が共通性がある。そうすると群化、ひとつの塊に見える。こういうものは人間は非常に安らぐというか心地よく感じるものです。このなかに形が全然違うマンションが建つとこの群化という平衡状態が保たれたものが崩れるわけです。どうしてそうなると景観が悪いのか説明できませんよね、しかしゲシュタルト心理学によると人間の視知覚反応としてみんな拒絶するのです。説明ができると違うんです。 P82~83 シーン景観とシークエンス景観 シーン景観というのは、移動しない視点からの写真的な眺め。シークエンス景観とは、視点の異動により連続的に変化する動的な眺め。 右の写真をみて)農協の広告が一番印象深いところに設置されています。農協としては成功してますが、地域としてはどうでしょう。この場所からわっと広がる田園景観を見たいところで広告看板が出てきてしまう。この看板をちょっと別の場所に移しませんかと促す。 ◆資料:教養編P84  自分たちが生活している北海道、さらには自分たちの町や事業となる現場がどういう景観特性なのか理解して、調和をはかっていくことが非常に重要となります。 ◆資料:教養編P86 我々が住んでいる北海道の景観とはどういう特徴があるのか、本州と比べると非常に豊かでヨーロッパ的です、一方海外の人は北海道の魅力をどう見るか、非常に短い距離で変化に富んでいたり明確な四季や町の近くから山が見えたり、それが実は海外の人にとってみれば自分達の町とは違うものに見えます。国内外両方共通するものとして、道路や河川背景の景観や冬の暮らしの景観などです。 ◆資料:教養編P87~ 北海道の景観特性としては、主に10種類くらいあります。山岳景観、原生の自然が残る山地や市街地の近くから見える山、例えばニューヨーク・パリ・ロンドン、東京や大阪などの大きな街に住んでいると、住んでいる場所から山はなかなか見えません。それから、広大な平地、湿原、開拓の歴史でもある格子状を基本とする田園、なだらかな丘陵地、それから実は、北海道には多様な風景が楽しめる海岸線があります。そして、風光明媚な湖沼、これも北海道の景観の特徴です。あとは、開拓時代の面影が残る欧米的な街並み、明確な四季の変化がもたらす彩り、そして、忘れてはいけないのが冬の暮らしがつくる北国の景観です。夏の幅広い道路も冬の堆雪スペースの為に広がっており冬の暮らしがつくる北国の景観となっています。 ◆資料:教養編P98~  千歳空港からJRで札幌に向かうと最初に街が見えますが、残念ながらスカイラインが犯されて身近な山並みが喪失しています。先程、街から山が見えていると言ったのが、非常に残念ながら喪失しているという事になります。 それから良好な視対象への阻害、そして色の氾濫です。資料P100の4枚の写真の色がアジア的とよく言われるのですが明治や江戸時代の日本から考えるとこういう色は中華文化的です。一番使われるのが、緑・黄色・赤の三色です。この三色は誘目性が高いという事で使われています。 道路景観でいうと、どうしても冬の厳しい気象条件があるので防雪施設や路面施設が多くなっていますがヨーロッパでは、ここまで多くありません。 何かすばらしいデザインを飾る前にまずは日常を変えていく、安全に快適に暮らせることが結果的に人間にとって住みやすい環境となります。こういうことをSD法と言って人間の印象評価で人数を集めて実験を行うと、それぞれ主観性があるということが分かります。 ◆資料:教養編P108~ 次に、合意形成の役割について話したいと思います。 先程も話をしましたけれど、見る物は同じでも人に+よって印象は変わります、だけど共通性はあるというお話をしました。景観占用の時に、技術で解決する問題と合意形成で解決する問題があり、先程言った視点場のデザインをどこにするか、あるいは橋梁のデザインはどうするかと言った時に話し合いで決めても良いものは出来ません。しっかりと、工学的な根拠・技術に基づいて作ることによって、使う人も地域も幸せになれます。 景色は、人の経験によって印象が変わってきます。技術で解決するのではなく合意形成で解決する課題です。ゴアイラスクレーンを撤去するか撤去しないかという事が問題になっていますけど景観的にない方が山や海が見えたりするのですっきりします。しかし、ゴアイラスクレーンというのは高度成長で函館が豊かになった象徴なのです、それがなくなると非常に残念な思いになります。 今日お話ししたのは、最初に言っていた人間の本能として美への欲求を持っていますという話、ゲシュタルト心理学とか人間の感じ方・見え方は工学的な話、物の計画とか設計とか技術者の役割としてここまではしっかり理解してほしいです。でもここは、技術で解決できるのですがここから先は技術では無理です。歴史・文化さらに個人の経験、個人的価値観、こういう部分を考えて合意形成の話をします。技術ですむものと合意形成で解決するものときちんと分けます。 これらを全部まとめると、景観は3つの軸で評価します。1つは視覚的評価、先程言ったゲシュタルト心理学などです。これは、個人差が少ない。次は、身体感覚的評価、使いやすさや居心地の良さやバリアフリーなど、いろいろな活用・機能などを評価します。知識も多少影響します。最後に意味的評価、イメージ・地域個性・歴史性、これは個人の知識や経験、価値観などが影響します。 ◆資料:教養編P117~ 工学におけるデザインとは、アートとデザインの違いについてよく質問されることが多かったのですがアートというのは美を創造・表現しようとする人間の活動です。デザインというのは、作ろうとする物の形態について機能・生産工程・予算をみて構成されています。ですから、工学のデザインというのはアートではありません。デザインは、現状を少しでも良いものに変えようとする一連の行為であると有名な先生が言っています。デザイン技術は習得することが可能ですがアートは、どちらかというと天性。例えば、ウサインボルトの走り方ですが、きれいで機能を追求した形、早く走ろうとした結果がこういう形になっています。飛行機も同じです、性能を高めていったら美しい形になる。設計において、必要な作業となります。工学におけるデザインとは、機能の発揮と向上が目的でデザインをしている。それに比べてアートによる自己表現は、時として説明しなければ生かされない。資料P124写真右のカエルのデザインをした有名な橋があります。なぜカエルが良くないのか、工学のデザインは自己表現ではありません。よく自治体でも照明灯にいろいろなものを付けますけど、それを照明灯でやる必要があるのか、時代とともに陳腐化したり、価値が下がったりします。迷ったら何か付けてしまう、ないよりはつけた方が良いというのは設計者の迷いです。最後になりますけど基本技術と計画思想が一体となって初めて良好な景観や環境に配慮された社会資本となります。わたしの話はこれまでです。

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