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釧路市の小さな企業大陸建設がハイスペックMMSを導入し三次元点群を活用するまで

ID:20221030-999999-01

講師:大陸建設株式会社 櫻庭 晃(さつらば あきら)

以下の資料は、技術研鑽に役立つことを願い、講師のご厚意によりご提供いただいたものです。


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凡例 ★:クリックしてアニメーションを進める。 ◆:クリックして頁を進める。

北海道釧路市の大陸建設(株)櫻庭です。
本日は釧路市の小さな企業、大陸建設がハイスペックMMSを導入し、三次元点群を活用するまで
と題して講演させていただきます。◆

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まずは弊社の概要のご説明となります。
本拠地は北海道の東に位置します、人口16万の釧路市です。
弊社は創業1948年、今年で創立74年の企業です。
メイン業務は土木・建築工事の総合建設業です。◆

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弊社はこちらのように土木建築の工事部門、舗装業者様向けのソフトウェア開発部門がありまして、わたしが所属しているのは工事測量、計測部門です。
北海道内でこのような工事測量を行っている業者さんの中では、比較的受注量が多い企業だと思います。◆

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その工事測量ですが、舗装業者様向けのボリューム計算では、こちらのような手法で計測しておりました。
左側は計測機械を牽引して交通規制をかけながら計測するタイプ、右側は交通規制はかけないで路肩や歩道にトータルステーションを設置して計測するタイプ。
左側は車道に出るので安全性に難があります。右側はトータルステーションで1点1点測距して計測するためスピードに難があります。
いずれはこのような計測システムは時代遅れになるだろうと思い、常に新しいシステムを探しておりました。◆

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そのような新しいシステムを探しているときにMMSと巡り会いました。当時は三次元点群の走りの頃でしたので、地上レーザスキャナの導入も考えていたのですが、
やはり地上レーザスキャナだと、レーザーの到達距離の問題でターニングが発生、時間が掛かるだろうし、交通規制を掛けなくても計測出来るMMSのシステムに魅力を感じ導入することに決めました。
当時としては一番スペックが高い、1秒間に100万点の点群を放射する高密度レーザを搭載した車両を導入しました。
その当時で全国でも50台くらいしかないMMSの中で、高密度レーザ搭載タイプは全国でも10台程度で北海道発の三菱MMSの導入でした。
更に舗装の平たん性を計測する変位計と全周囲カメラの装備を追加し、総額は1億を超える投資を行いました。
発注してから納期までは6ヶ月間ほどかかり、それまでの間営業活動を始めたのですが、お客様の反応は今ひとつで、
東京にある業者さんに言われた言葉が、大陸建設がMMSを持つのは戦闘機に竹槍を持って挑むようなものだ。と言う言葉です。
どっちが戦闘機でどっちが竹槍だ?とか思いましたが、これが全道的、全国的に見た大陸建設の評価か。と納得せざるを得ませんでした。◆

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MMS運用にはノウハウも必要で、当時はなかなか稼働は上がりませんでしたが、MMSを保有している業者さんの集まり、MMSユーザー会などで積極的に交流を計りました。
弊社が非常に恵まれていたのは、ちょうどその時自動運転などの高精度地図業務が始まったときで、その高精度地図作成のためにはMMSの点群が必要と言うことで、
全国の高速道路の計測が行われ、弊社のMMSは北海道はもちろん、東北全域、九州北部の計測など、計測距離は合計で1万キロにも及んだと思います。
そのお陰でMMSの稼働がぐっと上がりました。不安に思っていたMMS運用のノウハウもこの時に完全に身に付きました。◆

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これが導入当時の簡単な受注の内容となります。
2015年にMMSを導入しまして、導入当初は舗装工事の計測や簡易路面性状業務が多かったのですが、導入2年目後半辺りから高精度地図業務がぐっと増えてきます。
この頃は少しの間舗装に関する業務は控えて、高精度地図業務に専念する事も多かったです。
入社以来舗装の調査に携わっていた者としては少し寂しいと感じた時期でもありました。◆

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2017年には路面性状自動測定装置の性能確認試験にチャレンジいたしました。
この試験は路面性状業務をするに当たり必要な資格となります。
試験項目は、距離、ひび割れ、わだち掘れ、平たん性、の4項目あり、全て合格する事が必要です。
特にわだち掘れ測定精度は、基準値に対してプラスマイナス3ミリ以内というハードルの高い項目です。
この年無事に合格する事が出来て、今年迄継続して合格が続いております。◆

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性能確認試験に合格出来てからは、MMSで相対精度3ミリ以内と言う精度に合格出来ましたので、舗装の調査にMMSを応用が出来るようになりました。
MMS点群からこのように線形をはめ込み、断面を切り出す、今まで行ってきた路面計測機械の様な使い道も出来るようになりました。
断面を切り出してからは、切削オーバーレイの専用ソフトでボリューム計算が出来るようになりました。◆

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MMSを使用した路面計測の効果、特徴としては、このような効果、特徴があります。
1.交通規制が不要:一般車両の流れに追随して計測が出来るため交通規制が不要です。
2.安全費が大幅削減:交通規制を行わないため、当然規制車や交通誘導員が不要になります。
3.高精度:MMSの高密度点群を使用した計測は、今までの路面計測機械の精度と比べて、同等、もしくはそれ以上の精度が出ます。
4.MMS計測と同時に、ひび割れを測定出来る、平たん性とIRIも測定出来る、また舗装路面に施されている区画線情報も同時に取得出来ます。
5.MMSの点群で面的に取得出来ます。面的に取得にする事により、今までの計測機器の測点単位で計測するときにあった、必要となる追加測点の計測が不要になります。
又予備計測を少し長めに行っている現場では、工事施工延長が延びた際、追加計測は不要となります。
非常にメリットのある技術となり高評価を得ることが出来ました。この技術はNETIS技術にも登録されることとなりました。◆

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MMS業務が舗装に応用出来るようになってくると、わたしの舗装業界に貢献していきたいと言う気持ちが非常に大きくなってきます。
また稼働が非常に多くなり、会社の勢いも増してきます。当時は考えられなかった、MMS2号機の導入を決めました。
2号機の特徴としては、路面のひび割れを鮮明に見ることが出来る、ひび割れ専用カメラを搭載いたしました。
右下のように微細なひび割れも認識できるシステムとなります。
この時は1号機導入の時よりも応援してくれる人が多くなっていたのを実感しました。
この時辺りから、MMSを北海道から、釧路から全国に発信したいという気持ちが大きくなってきました。◆

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こちらはMMS走行で取得出来るカメラ画像から、オルソ平面図が出来上がりますが、その平面図から「AI」を使用してポットホールを検出する技術です。
ポットホールは特に北海道に多く発生し、冬のしばれが抜ける2月末頃から特に多く発生します。
又最近では、位置と高さ情報を持っているMMSの点群から、水が溜まりやすい場所、ポットホールになりそうな箇所を検出する、と言う技術の開発も進めております。
これら検出技術で舗装診断、点検の効率化を計れないか?と言う期待もあります。◆

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最近ではICT舗装への応用もMMSを使用する事が多くなりました。
こちらのように、ガムテープなどで点群調整用の調整点を作り座標値を取得し、その座標値に水平精度10ミリ以内、標高精度プラスマイナス4ミリ以内に入るように調整いたします。
これが出来る事により、マシンコントロールや出来形測定への応用も出来ます。調整用のソフトの開発も進んでおり、解析時間の短縮なども進んでおります。◆

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弊社は2015年に舗装診断研究会に加入させていただきました。
2019年にはスウェーデン運輸道路研究所(VTI)とのワークショップで三菱電機(株)と共同発表させていただきました。
2014年から続いております、IRI共通試験にも弊社は微力ですが積極的に協力させて頂いております。
そこからは大学の先生方、舗装業者さんの皆様、計測機械開発の皆様と知り合うことが出来、仲間に入れていただけたような気がします。◆

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弊社が舗装診断研究会に加入した後には、舗装診断研究会の活動目的に賛同して頂いたMMS保有会社、
左上は岩手県の一測設計様、左下は島根県のトーワエンジニアリング様、右上は岐阜県のモリテック様、右下は広島県の三英技研様、真ん中は神奈川県のアジア航測様、
MMS販売代理店のアイサンテクノロジー様、アジア航測様の技術部門、未来共創研究所様、多く加入して頂きました。
舗装診断研究会でも三次元点群を用いて舗装診断に生かすことは出来ないか?と言うことを議論して頂けるようになりました。◆

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こちらは舗装診断研究会の詳細調査WGの現場での実例です。
舗装の早期劣化の原因を調べるため、舗装面を剥がし、掘削して路床・路盤の状況を調べるのですが、
地上レーザスキャナを用いて、開削箇所の三次元点群を取得する事により、所得した点群から舗装や路床・路盤の厚さを調べたりする事が出来ます。
今までの写真撮影の場合、開削箇所の復旧後は再度状態を見ることは不可能でしたが、
三次元点群を取得する事により、路床・路盤の状態を永久的に保全することが出来るようになりました。◆

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このようにMMSをはじめとする三次元点群を扱う業者様が増えてきておりますので、舗装診断研究会の路面性状評価委員会では三次元データ利活用WGが発足いたしました。
わたしがWG長を務めさせていただいておりますが、具体的な活動内容としては現在、
2014年から続いておりますIRI共通試験で、今まで縦断プロファイルの真値取得は2級水準測量で5cmピッチで取得しております。
今年も先月にIRI共通試験2022が行われましたが、2日間で延べ50人の体制で作業しております。
この作業をTLSを利用して取得することにより、高精度に取得しつつ、人工数と工程を短縮出来ないか?と言うことを目的として、今年に入って2回の精度検証を行っております。
そちらの精度検証については鋭意進めておりますが、次回のIRI共通試験2024では地上レーザスキャナで取得出来れば良いなと思っております。◆

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こちらは今回エキシビション展示にご協力いただいたアイバック様のMMS車両です。同じくエキシビションにご協力いただいているクラボウ様のPG-4と言う、ひび割れをはじめとする路面性状システムを搭載した車両です。
弊社は年明けに3台目のMMSを導入いたします。アイバック様の車両と同じくクラボウ様のPG-4を搭載している車両です。
ひび割れを早く、精度良く取得し、路面性状の解析作業の効率化を計っていきたいと考えております。
ご清聴ありがとうございました。◆


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